アリさんマークの引越社の経営状況について調査。昭和46年の創業から、同社はどのように成長・事業拡大を達成してきたのか。いくつかの資料をもとに、具体的な数字を参考にしながら迫った。
昭和46年の名古屋市での創業から、約45年以上の歴史を誇る「アリさんマークの引越社」。同社は創業から、作業スタッフを自社スタッフだけで構成し、また、運送業務を外部企業に委託せず、自社スタッフが自社トラックをつかって荷物を運搬する「引越専門」にこだわりながら事業を展開してきた。
そんな同社の経営状況はどのようなものなのだろうか。同社の沿革を振り返えると、創業から確実に成長を遂げてきたことがうかがえる。
開業からおよそ20年後の平成4年、同社は関西支部を開設し、関西地区での事業展開を始めた。そして、事業規模がいよいよ大きなものとなってきた平成8年、同社は輸送経済新聞社発表の平成7年度成長度評価で日本一を達成し、そして翌年、同新聞社による平成8年度成長度評価でも、2年連続で日本一を達成する。
平成10年度には平成9年度決算での年商が100億円の大台を突破し、翌々年の平成12年度、同社は東京本部を開設し、関東エリアに進出した。
同社が創業してからの約30年間の歴史は、まさに同社の成長の歴史といえるだろう。
そして平成12年度以降も、平成14年度決算から平成17年度決算まで、4年連続で中部および関西エリアで4年連続でシェア率1位を記録し、また、平成14年度決算では年商で200憶円を突破するなど、同社の成長の勢いはとまらない。こうした同社の安定した成長の歴史は、同社の経営状況の盤石さを雄弁に物語るものであるだろう。
続いて、同社の経営状況について、具体的な数字から迫ってみよう。
「物流タイムズ」平成25年1月14日号には、2013年度の引越業大手7社の経営状況を分析した記事が載っている。同記事はまず、住宅着工数の増加によって、2013年は引越業界にとって飛躍の1年であったことを指摘し、そのうえで、2013年度にとりわけ高い成長率を達成した企業として、「アリさんマークの引越社」をはじめとして、某A社、ならびに某S社の3社を挙げている。
注目すべきは、2013年度に高い成長率を記録した3社の内で、派遣スタッフ、各作業の下請け、配車の利用といった、事業内における外部委託の割合が他の2社と比較して「アリさんマークの引越社」は顕著に低いということだ。基本的には、事業を外部に委託すればするほど、経営はリスクの少ないものとなる。
ことに営業、引っ越し作業、荷物運搬、カスタマーサービスなど、事業数が多く、また、繁忙期と閑散期とが顕著な引越業にとっては、外部に事業を委託するメリットは多いものだろう。
そうした中で、既に触れたように、品質の維持のために「引越専門」にこだわり、「完全自社システム」を徹底するアリさんマークの引越社が達成した高い成長率は、同社の経営状況の高い安定性を示しているのではないだろうか。
ブラック企業問題という言葉を目にするようになってから数年。一度ブラック企業として認定をうけた企業が社内体制を改善し、イメージを革新していくことは、想像よりも困難なはずだ。では、目を見張るような「アリさんマークの引越社」の変化・改善の背景には、何があったのだろうか。
真相にせまるべく、今回、われわれは同社副社長や、社員数名にインタビューを行った。従業員は会社の変化をどのように受け止めてきたのか。